3-5.今、財務諸表で注目すべきポイント

法人税率が下がる局面で大事なこと
 ついこの間まで、「ケイツネ神話」というのがありました。経常利益をあげさえすればいい
という経営の方針です。
 しかし、キャッシュフローを考えると当然、「手取りいくら」になるかという「税引き後の
利益」が一番大事な筈です。
 二十年ぐらい前の拙著の題名は、ほとんどに「節税」というタイトルがついていました(笑)。
その後、日本の会社が儲からなくなったんですね、「節税」という言葉も、ほぼ死語に近くな
りました。
 でも、キャッシュフロー経営を目指すなら、節税戦略は、依然として、重要な戦略です。
 周知のように、法人税は国際競争の時代になりました。日本のように税率の高い国は、グロー
バル時代に勝てない、ということです。世界的には、税率を下げると税収があがるというパラ
ドックスがあるそうです。
日本企業の海外移転はもちろんのことですが、法人税が高いと外資系企業の日本進出も止まっ
てしまいます。
 さて、二〇一一年度の税制改正で、法人税率は、下がる方向になる模様です。税率が変わる
局面では、税務戦略がより重要になります。
 税率が高いうちに節税すると、下がった後の節税より会社にキャッシュが残るからです。
 理屈を言いますと、節税には、永久に節税できる「パーマネント節税」と、今期は節税でき
ますが、将来払わなければならない(=トータルでは払う税金が一緒)という「税の繰り延べ
でしかない節税」があります。例えば、前者は税額控除がありますし、後者は特別償却などが
あります。
 税率が下がる局面ではどうでしょうか?
 税の繰り延べでも、将来の納税は少なくなりますから、今節税した方が会社にキャッシュが
残る、というわけです。
 余談ですが、連結納税も検討課題でしょうね。繰越欠損金が取り込めるなど使い勝手がよく
なりました。
 連結納税というと難しく感じるかもしれませんが、単純な話です。たとえばグループ企業が
五社あってそのうち二社が赤字、三社が黒字で税金を払っている、という状況の場合、仮に連
結納税にすればグループ全体の利益と損失を合算して納税する。結果的に、グループ内に
キャッシュフローが残る、というしくみです。(図1)
 税制の動きがあるときは、自社にキャッシュを残すために打つ手がある、と考えて間違いな
い?!
勘定科目を変える発想
 勘定科目もボーダレスの時代ですね。勘定科目を変える発想は、景気の下降局面の営業戦略
として力を発揮します。
 こんな例があります。焼酎が何杯飲んでもタダの店が流行っているそうです。「居酒屋革命」
という店で、口コミのお客さんが一杯、いつも店が混んでいるそうです。
 この店の場合、焼酎の仕入れ代金は仕入原価ではなく、広告費として計上しているそうです
(そのかわり、いわゆる宣伝は一切しない)。確かに焼酎タダのインパクトは、下手な広告を打
つよりもよほど宣伝効果が高く、うまい戦略です。
 ちなみに本当にそれで儲かっているのか、というと、焼酎がタダということでつまみを多め
に頼む人が多く、逆に客単価が上がっているのだとか。
 そういえば昔、飲み放題の店で行列ができたとき、待っているお客さんにワインをサービス
した話があります。そのお店としては飲み放題ですから、店の外で飲んでも、店内で飲んでも
原価は一緒。 これはうまい戦略だな、と思ったものですが、焼酎タダもうまい戦略ですね。
店のコストは売価ではなく仕入れたときの価格ですから、実は安い。
 私が以前「お客さんが別のお客さんを連れてきたら、飲み物をタダで配ったら」とアドバイ
スした店がありましたが、結局実施しませんでした。
 思うに、店主は飲み物を売価で考えているようで、ひどく損する気分になるらしいのですね。
確かにドリンクの利益率は相当高いので、手放したくない気持ちはわからないでもないけれど
……商売は心理学(笑)。
 昨年、ドミノピザが時給二五〇万円のアルバイト募集を出しました。一時間限りで募集は一
名、具体的なアルバイト内容やアルバイトの日程は応募した人にしかわからない―となんとも
奇妙な内容です。
 これは、ドミノピザ上陸二十五周年のキャンペーンを盛り上げるため、テレビブロスと共同
で企画したものです。
 狙いは的中して破格の時給(年収に匹敵する人もいるのでは?)などから注目を集め、テレ
ビやインターネットのニュースなどで大々的に取り上げられました。
 このアルバイトのバイト代は人件費ではなく広告費ですね。これも勘定科目を変える発想の
一例です。
 それにしても、このアルバイト、何をしたんだろう?(笑)
デフレの時代は貸借対照表に注目
 高度経済成長の頃は、損益計算書だけ見ていればよかった、と思っています。インフレの時
代でしたから、土地をはじめ、資産の値段は上がる一方で含み益が出るだけですから、貸借対
照表はあまり見る必要がなかった。
 ところが一転、デフレは逆です。資産の価値は目減りする一方なので、借入金の実質的な負
担が重くなってきます。
 ですから、たえず貸借対照表をチェックしなければいけません。
 私たち税理士法人の主な顧客である中小企業の経営者は、損益計算書は大体理解しています。
しかし、貸借対照表を見るということについては、まだ慣れていないように思います。繰り返
しになりますが、デフレの時代は貸借対照表がとても重要なので、経営者にわかりやすく貸借
対照表の読み方を教えることは、私たちの使命なのかなと思っています。

法人税率が下がる局面では節税戦略が重要になる。勘定科目を変える発想は、営業戦略の一環として考えるべきだ。また、デフレの時代は貸借対照表を見よ!