今年もライバルとの差別化
──トレンドに騙されるな!
今の時代、何が起こるかわからない時代、「一寸先は闇、一秒前は過去」の時代です。
過去の成功は、未来を保証するものでもありません。
又、人と同じことをやっていては儲かりません。
「人と違うことをやる」「人の逆を行く」これが大切です。儲けのコツです。
「豊年の凶作、凶作の豊年ということもある」(本間宗久)
昔の偉大な経営者は、不況の時にあえて、設備投資をしたというじゃありませんか。
特に変化の激しい昨今、人と同じことをやっていては儲かりません。
流行に騙されない、振り回されない!
──新興国より国内
私は、『経営ノート二〇一二』で、中小企業のグローバル化元年と書きました。
中小企業も普通に海外進出する時代になったと書きました。
新興国へシフトがトレンドです。
でも、今年は、少しネガティブな話をします。
製造業で大会社は、たしかにそうかもしれません。
でも、国内企業で、特に経営資源が限られている中小では、敢えて新興国に行くなら、長期ではわかりませんが、国内でまだまだチャンスがあります。
弊社もカンボジアに出ました。でも苦戦しています。
カンボジアで知り合ったある上場企業のオーナーも同じことを言っています。
曰く「日本国内の方がよっぽど商売し易い。」
特にサービス業は難しいですね。当たり前ですよね。単価の高い国から単価の低い国へのシフトですから。
二〇一二年の『経営ノート』でも書きました。
例えば、カンボジアは伸びているといってもまだまだ日本で一番GDPが低いと言われる沖縄の三分の一です。(図 12)
──やみくもに頑張らない、アバウトにやる、六〇%達成でも合格点
「ストレスを与えられると強くなるという 話があります。
トマトはアンデス山中の瓦礫の中から生まれたそうで、水もない状態なのでがんばって根を伸ばしていき、栄養分を吸収したので「大変甘みがでた」のだそうです。
それがトマトを甘くするコツと栽培法の原点といいます。」
出典は忘れましたが、過去の私の若いころ の経営メモです。
若い時はストレスに勝つ経営をベストと考えていました。
でも年を取った今では、そこでストレスに耐えきれず、死んだトマトは数えきれないだろうな?
と想像します。
私は、最近では、過度なストレスや、プレッシャーは、会社をダメにするという仮説をもっています。
イソップのアリとキリギリスをもじった、「キリギリスがアリを見に行ったら、アリは働きすぎて、過労死していた」という冗談がありました。
二〇一二年の『経営ノート』はケーズデンキの頑張らない経営を書きました。
また、サイゼリヤの正垣会長は、「優秀な店長はいらない」と言っていました。
私は、社員に「頑張るな」と言えるほど悟っていませんし、「優秀な店長はいらない」と断言できる心境には程遠い。(笑)
それでも従業員に過度のストレス、プレッシャーは、今の時代マイナスだなと思っています。
ともかく、疲れない経営がコツです。
こんな時代、あまり生真面目にやると、ストレスでパンクします。
そうでなくても、今の時代やることが多い。
例えば、SNSと言えば、「自社でもやらなければ…」と思ってしまいます。
孫社長がツイッターを始めたら、私もなんて考えてしまう。
焦る気持ちはわかりますが、そこを抑えるのは、経営のコツかもしれません。
余談ですが、風俗街で、交通標識が出ていました。
「飲んだら乗るな、乗りたい気持ちにブレーキを!」
焦る気持ちにブレーキをかける?
目的を明確にし、負荷を最小限にする。
昔、野球の江夏豊は「一球入魂なんてウソだ、それでは、九回持たない」と言ったと聞いて、
江夏は頭がいいなと感心したことがあります。
ちなみに江夏がバッシングにあった時、「みんな俺を黒い目で見る」と言ったとか。
これは、マスコミが作ったウソでしょうね。(笑) 私は、徹底度は、正直六割で合格と思っています。
ついでに言いますが、二・八の法則、二・六・二の法則があります。
単純に考えますと、二は、ほっといても稼いでくれますから、残りの八を少しかさ上げした
だけでも、企業はグンと伸びますよね。
──ともかく張ってみる
選択と集中は、ビジネスの基本です。
でも、不確実性の時代ですから、どんな天才でも正確になにが来るのか予測はできませんよね。
こんな時代は、少しでもいいから、ともかく、面白そうな事業に参加してみてはどうでしょうか?
うまくいかないと思ったらすぐ撤退する。(前述しましたが、そのためにはホールディングスは、便利な組織です。)
二〇一二年の『経営ノート』で、コダック社と富士フイルム社を比較して、「あまりコア事業に集中するとかえってリスク」と書きました。
「多様性」は一つの保険(富士フイルムホールディングス古森会長)です。
私は、こんな変化が激しい時代は、ともかくやってみる、張ってみる、「多様性」がキーワードだと思っています。
一点集中は、かえってリスクです。社運なんかかけてはいけない。
夢の飛行機と言われた、ボーイング787はトラブル続きで、世界中で運行停止になりました。
準国産機と日本の航空会社は導入に力が入ってましたものね。
でも、運行停止になれば、一般企業でいう「新商品の投入」ができない、売るものがなくなる訳です。痛手ですよね。
これだと思わないこと、決めつけないこと、「勝つと思うな、思えば負けよ」美空ひばりは、いいことを言いました。(作詞は関沢新一さんですが…。)
サムスン柔軟性に磨き(『日本経済新聞』、二〇一三年一月二六日)という記事がありました。
「営業利益四半期八九%増。革新的な製品を世に問う独創性はないが、先行メーカーを迅速 に追って事業モデルを転換し、部品を含めた総合力で稼ぐ機動力が際立つ。
すでに、ポストスマホの戦略も探り始めた。」
一連の事業の転換は「メーカーというよりマーケティング会社」。
日本で言えば、S社ですかね。
かつては、旧松下電器の二番手商法。
──コストより売上げと粗利
敢えて誤解を恐れずに言いますと、二一世紀型の経営は、売上げ、粗利を上げる算段の方が、コストを下げる努力をするより、よっぽど前向きではないか?
少し理屈を言います。(笑)
二〇世紀は工業社会です。主役は、機械です。間違いなく工業製品は、コスト次第です。
でも、二一世紀はどうでしょう。
サービス業の時代です。極端に言いますと、メーカーでも物売りだけでは儲かりません。
二一世紀のビジネス、サービス業の主役は、間違いなく人です。
ビジネスの型は、固定費型です。つまり、かかるものはかかります。よく人件費の変動費化という人もいますが、正社員かパートかといった違いはあっても、かかるものは一定にかかる。
やはり、固定費です。
しかも、人間は、機械みたいに減価償却ができない。
(余談ですが、昔、同級生の女性に、久しぶりに会って、「減価償却が進んだね。」と口がすべって、以来口をきいてもらえないことがありましたが…。(笑))
ともあれ、リストラしますと、いい人間からやめます。するとコスト減より、間違いなく、売上げ減の方が大きい。(稼ぎの主役が人間ですから、製造業で最先端装置を失うのと同じです。)
サービス業は、一般的に粗利が大きく、固定費が高い。すると売上げを上げた分だけ、利益の貢献度が増します。
だから、前向きに、売上げを上げる方を志向した方がいい。
サービス業で、粗利が低い商売をしていたら、即座に、粗利の改善が急務です。念の為。
──ボトムアップよりトップダウン
狩猟型のリーダーは、獲物のいる場所を見つけられ、なおかつ捕獲できるリーダーが狩猟型リーダーの条件である、と言われています。
ともかく、この不安定な時代は、リーダー次第です。 例えば、ソフトバンクの孫社長は、ともかく意思決定が早いと言います。
私も何人かすぐれた経営者を知っていますが、決断も早く、撤退も早いですね。
こんな記述を見ますと、つくづくそう思います。
「内田(喜吉、ラオックス第二代社長)はラオックスの社長を退任後、ダイエーの中内㓛に 請われて、ダイエー・メディア・ソリューションズというコンピューター販売会社に専務で入った。その経験で、内田は孫、中内という新旧の経営者の違いがよくわかったという。
『中内さんは社員みんなから恐れられていました。中内さんの側近は、みんなビクビクしながら仕事をしていた。これに対して孫さんは部下に強い口調で命令したり、ましてや怒鳴ったりすることはない。』
それから中内さんはとても慎重な人だった。いろいろな提案を持ちかけられても、即決せずにじっくり考えていた。中内さんの机の上はいつでも未決の書類がたまっていた。
一方、孫さんはさくさく物事を進める人なんです。なにか提案すると、その場で答えが返ってくる。 撤退の決断も早い。実はソフトバンクは九〇年代にソフトの大型店舗を、ベイエリア地区に 出店することを考えていたんです。計画はかなり進んでいたんですが、採算を計算したら資金回収にかなり時間がかかることがわかった。すると、すぐに『やめた』となるんです。
行くのも戻るのも、あの人は即決です。いま話題になっているソーラー事業だってそうでしょ。思いついたらすぐに動くのが孫さん流なんです」(ゴシック筆者)(『あんぽん│孫正義伝│』佐野眞一著、小学館)
民主的経営は、意思決定が遅くなり、時期を逸します。
みんなの期待を一身に集めた、民主党政権だって、あえなく三年足らずで崩壊しました。
敢えて言います。今の企業間戦争は、リーダー次第です。
極端に言います。
みんなの意見は聞いてはいけない。(笑)
──社長の交際費はけちらない
交際費も同じです。少しずつ、みんなで民主的に使うのが一番悪い。
かえって総額が張りますし、まったくと言っていいほど、効果はありません。
社長の交際費はけちってはいけません。
社長の交際費は、情報収集でもあります。
私も飲みながら、相手からのちょっとした一言で、大きなヒントを得たことが何回もありま す。
仲間と海外旅行をして、参加者の何気ない一言から、「なるほど」と思い、
「この海外旅行の費用は出た」と思ったことはしばしばあります。(笑)
余談ですが、故田中角栄(カクさん)は、大層鼻が利く政治家だったと言います。(『田中角栄』早野透著、中公新書)
今どきのリーダーは、鼻が利かないといけない、そのためには、外に出ないといけない。
外に出るにはお金が要ります。
ですから、社長の交際費は、けちってはいけない。
なんか、我田引水?(笑)
余談ですが、私の経験から言いますと、世の中一〇年で大きく変わります。
変わる時は気付かないのですが、あとで振り返ると、あの時は節目の年だったなと、気が付
きます。
これは、三〇年以上、税理士事務所をやって、色々なお客様とお付き合いしているメリットですかね。
次になにが来るか、多少ですが、皮膚感覚で、ぼやっとですが、わかる気がします。
全然はずれているかもしれません。(笑)
ですから、次の時代はなにかと、考えながら、情報を集めたり、聞いたりしますと、何か変化の兆候が見える筈です。
重ねて言います。情報収集の為にも、交際費が必要。
──社長の役員報酬をカットしない
ついでに言いますが、安易に社長の役員報酬をカットしてはいけません。
どうせ、借金の連帯保証をしていますし、会社に何かあれば、自分のお金をつぎ込まなければならない、これが、中小企業の社長の宿命です。
役員報酬をカットして、出した利益は本物の利益ではありません。
昔、私が若い頃の話ですが、お客さんで、会社の利益が出ないので、毎年、役員報酬をカットして、とうとう、月額一万円まで下げてしまいました。
彼曰く、「これで、都営住宅に入る権利が出た。」
私は、「この会社は見込みがないな」と、つくづく実感したことを、昨日のことのように鮮明に覚えています。
──中長期計画を立てない、長期計画は、社長の頭の中にしまっておけ
中長期計画は社長の頭の中にしまって、ともかく単年度で実践し、効果を出す。
こんな時代は、三年の計画でも、長い。
(三年計画は、最初の二年は遊びと思ってください。最後の一年でバタバタする。人間とはそういうものです?(笑))
長期に至っては、極端に言いますと、「社長の頭の中にしまっておけ」こんな感じですかね。
誰も将来なんかわかりません。
目の前の果実の連続が将来の飯の種を生むんではないか、そう思いますね。
以下は、ドコモの株主総会のやり取りです。
どう見ても、株主の方に軍配が上がります。
なぜ、iPhoneをドコモがやらないか?という株主からの質問に対し、
その回答は、
「iPhoneもいつまでも隆盛というわけではない。熟れすぎたリンゴはいずれ木から落ち る。」
株主
「そんなことは分かっている。それでも熟れているうちに食いつくのが経営者ではないのか」 すかさずこの株主がこう切り返すと、同幹部は返す言葉を失ったという。(『選択』、二〇一三年一月号)
会社の寿命
──もはや三年?
企業の寿命(盛期)について調べてみると、次のような数値が見つかる。
一九七〇年、約五〇年
一九八三年、三〇年
一九九七年、一二 ・ 五年
二〇〇八年、一〇・五年
いまや会社の寿命は「確実に一〇年を切った」「もはや三年」という見解もある。(『2022─これから 10 年、活躍できる人の条件』神田昌典著、PHP研究所)
──三年に一度モデルチェンジ、一〇年でフルモデルチェンジ
私は、「経営者は、一〇年ごとに生涯三度ジャンプしなければならない。三年に一度モデルチェンジ、一〇年に一度フルモデルチェンジが必要」と『経営ノート二〇一二』で書きました。
一〇年に一度は主力事業を入れ替えなければならないのかな?
例えば、スーパーが右肩下がりになった時、イトーヨーカ堂はコンビニで、イオンは、ショッ
ピングモールを展開して生き延びました。
しかし、ダイエーはそれができなかった。(『東洋経済』、二〇一一年一〇月号)
ですから、かつて風靡した、企業の寿命三〇年説では、とてもとても今は持たない。
「経営者は、生き続けるためには、生涯、三段ロケットを用意しなければならない。」
こんな時代、長期計画は、必要なのだろうか?
と思うんです。
単年度で、効果を上げていく、間違ったら、軌道修正をしていく。
三年計画を立てたら、最初の二年は遊びと思った方がいい。
単年で成果を出していく、その方がよほど、現実的、実践的です。
事業の夢を持つのは大いに結構ですが…。
事業の夢は社長の頭にしまっておけ。
にんべんにゆめと書きます。はかない(儚い)です。
ひとのゆめは、はかない。(笑)
──あえて最先端をはずす、遅れた業種で一歩先を行く
かつて印象に残っているセミナーに、日本マクドナルドの故藤田田さんのセミナーがあります。藤田さんは、「日本の産業は、日本列島のように、細長い。飛びぬけて最先端の業界もあるし、ものすごく遅れた業界もある。」
ビジネスの天才だった藤田さんの言葉は、目からうろこでした。
又、ファッションセンターしまむらの実質創業者である藤原秀次郎相談役に、会計事務所の戦略を尋ねたことがあります。
ニヤッと笑って、「遅れた業界で一歩先をいけ」。成程なーと思いました。
別に最先端を目指す必要がない。 その属する業界で、同業他社より、一歩先を行く。これが、競争優位のポイントではないか?
例えば、事業として成り立ちにくい保育園で上場会社も出ております。古い、どちらかというとビジネスよりボランティアの色が強いこの業界ですが、続々と新しい会社が参入しています。
大手のJPホールディングスは、四年で売上高は二倍になったといいます。(図 13)
ですから、成長性のない業界でも、やり方を変えますと、成長します。
新しいやり方をすれば十分勝機はあります。
遅れた業界で、進んだシステム、そして、データと科学がキーワードかな?
まわりを見渡すと、まだまだ、そんな業種、業界があります。
難病と闘いながら、病院を経営している徳洲会の徳田虎雄理事長は言います。
「『医療は金儲けではない』という口実で、経営をさぼっている。」 (『週刊ダイヤモンド』二〇一二年一〇月二七日号)
凄みがあります。
ところで、ベンチャー企業。起業だって、遅れた業界がねらい目です。
「ただし、 IT系のように流れの速い業界を選ぶ必要はない。いや、 起業するならむしろ、古くさい業界の方が狙い目だと言えるだろう。
歴史のある企業群が、一昔前からずっと同じやり方でビジネスを展開している。顧客は皆、うっすらと不満を感じているのだが、どの企業も解消するための手を打っていない。そんな業界なら、新しいやり方を導入して、短期間で他社を圧倒するチャンスがあると思う。」
「古いしきたりが幅をきかせる時代遅れの業界」、これが起業のねらい目だとか。(『リアルフリーのビジネス戦略』高橋仁著、幻冬舎)
目からうろこ、ほんは、ほん(ま)に安いですわ。(笑)
──敢えて、手間ヒマをかける
名刺を管理して、営業に使おうと思ったことは、誰でも一度はあるんではないかな。
すると、自動仕分けをしてくれる、いろいろな名刺管理ソフトがあります。
でも、失敗しますよね。私も二、三度やりましたが、見事失敗でした。
名刺ぐらい個性豊かなものはない、ですから、簡単にスキャンができません。
結局手書き入力になってしまいます。
テレビでやっていましたが、名刺の入力代行会社があるといいます。
成程、それだけでも、ビジネスが成り立つんだと、感心しました。
前置きが長くなりましたが、敢えて手間ヒマをかける。
単純に言いますと、二〇世紀はセルフ、二一世紀は手間ヒマです。
手間ヒマというキーワードでビジネスを見ますと、いろいろな事例が探せます。
言い換えますと、顧客は手間ヒマをかけたくない。
顧客は面倒くさい、特に高齢化してきますと、電球すら自分で替えられない。
代行してあげることが、顧客志向?
──宅配サービス
二〇年前になるんでしょうか、当時有名な経営者が、「なぜ酒屋は配達をやめたんだろう?
毎日、自宅を訪問してるんだから酒だけでなく、なんでも売れるのに」と話していたことを今でも、覚えています。
でも、二〇年経ってやっとそんな時代が来ました。
スーパーなど、セルフサービスが基本の業態でも、競って、宅配をやる時代になりました。
マックだって、宅配を始めました。「マクドナルド、宅配本格化、飽食時代、サービス力が
カギ」(『日本経済新聞』、二〇一二年一月二一日)
──街のデンキ屋さん
少し前ですが、地域密着の街のデンキ屋さんも、話題になりました。高齢化すると、自宅に来てくれるデンキ屋さんを選び、高くても買う。又、担当者は、留守番まで頼まれる、こんな話がありました。
この代表例がでんかのヤマグチです。マスコミの露出度が高く、有名な電器屋さんです。
「でんかのヤマグチ」の例を見てください。
経営理念 でんかのヤマグチは当店を利用していただく大切な大切なお客様とお客様の為に働く社員のためにある活動方針
・お客様のわがままをすべて聞くこと
・お客様のかゆいところに手が届くこと
・お客様の楽しい買い物を楽しくお手伝いさせていただくこと
(でんかのヤマグチホームページより)
出張訪問が無料である。 “遠くの親せきより近くのヤマグチ”と言われる由縁はここまでの徹底した顧客サービスにある。また、商品を購入して頂いた日に即日配送して「買ったらすぐに使いたい」というニーズにもしっかり応えている。結局、「高いもの程、すぐに来てくれるヤマグチを選ぶ」というお客様が増えている。
具体的なサービスを挙げると、
1 .電球 1 個の交換でもトンデ行きます!
2 .エコポイントの手続きのお手伝いもします!
3 .録画予約もします。高齢者には難しい録画予約やリモコン操作、今日のドラマの番組予約もトンデ行きます!
4 .冷蔵庫が壊れたら、修理の前に、クーラーボックスに氷を入れて、エアコンが壊
れたら扇風機を持ってトンデ行きます!
5 .頼まれれば、営業車で駅まで送ります!
6 .頼まれれば、簡単な水回りの修理もやります!
7 .頼まれれば、部屋の中の模様替えのタンスの移動もお手伝いします!
8 .頼まれれば、“ペットのえさやり”、“庭の水まき”、“留守の見回り”もやります!
「(出典:藤井正隆さんのブログ『中小企業と地域のブランディングで日本を元気に!』)」
同じような成功例が山形にもありました。
山形「峯田電器」年商 5 億に/各戸に密着営業が鍵(『四国新聞』二〇〇九年一一月一日)
人口約 1 万 5 千人の山形県山辺町にある“町の電器屋さん”「峯田電器」が、景気低迷の中でも2%以上の成長を維持、年商は 5 億円に上る。
武器は徹底した地域密着型の営業。 15 人の営業担当が、 1 人 1 日 30 世帯を丹念に回り「大型店はできないサービスを実現している」と峯田季志社長( 58 )は胸を張る。
訪問先の家庭では家電を修理し、手の届かない高さの電球も交換。「家電が苦手というお客さんがいれば、マニュアルを簡単にした説明書も作ります」(営業担当者)
冷蔵庫の大きさも「世帯人数や生活パターンを知っているから、その家に合った提案ができる」と峯田社長。テレビを買い替える家には「試しに使って」と大きさの違う 2 台を無償で貸す。数日後には「やっぱり大きな方がいい」と、より大型を選ぶ人が多いという。
これらの営業も顧客との信頼関係が基盤。月 2 回は担当者が来るという山辺町の主婦( 64 )は「売りっぱなしじゃなく、何かあれば、いつも顔を出してくれる人が飛んで来てくれる。安心感が大型店とは違う」と話す。
「仏壇の電球が切れた」と聞けば電球を届け「電動カートがバッテリー切れで立ち往生 した」との電話では、車で迎えに行く。顧客には、専用の電話番号で夜間も社長が対応。
晩酌の最中に「ヒューズが切れた」との電話で、社長自らタクシーで駆け付けたことも。ある大手の家電メーカーが最強の営業部隊だった○○ショップの再生を試みたそうです。
でも前述のでんかのヤマグチの例は、ホントに稀なようです。
それより、後継者すらいないという店が多数だったとか。
考えることより、実践し続けることが難しいです。
手を抜いたら事業は終わりですものね。
【POINT】
①流行に振り回されてはいけない。中小企業では国内に まだまだチャンスがある。
②やみくもに頑張らない、疲れない経営がコツ。徹底度は六割で合格。
③変化が激しい時代は、ともかく張ってみる。
「多様性」がキーワード。一点集中はかえってリスクが高い。
④二一世紀型の経営はコスト削減より売上、粗利の向上を重視する。
⑤不安定な時代はリーダー次第。リーダーが外に出て情報収集しなければいけない。
そのためにも社長の交際 費はけちってはいけない。
⑥役員報酬をカットして出した利益は本当の利益ではない。
→社長の役員報酬は安易にカットしない。
⑦中長期計画は社長の頭の中にしまって、単年度で成果を出すようにする。
三年に一度はモデルチェンジ、一〇年に一度はフルモデルチェンジ。
⑧あえて最先端を目指さない。遅れた業界で一歩先を行く
⑨二〇世紀はセルフ、二一世紀のビジネスは敢えて手間ヒマをかける。