2-8.二兎を追うものしか、二兎は得られない

戦略も戦術も
──営業力も
 
二〇一一年の『経営ノート』は、戦略より、実践がテーマでした。
 
二〇一二年のテーマは、戦略も、戦術もどちらも重要。
 
そして、二〇一三年は、王手も飛車も取りに行く時代?
あの巨大な日本の電機メーカーの惨状を見て、スマホに乗り遅れると、あんなにも大変なの かと、正直考えさせられました。
 
方向性(戦略)を見間違えると、いくら現場で努力しても、無駄になります。
 
営業に関してもそうです。
 
営業戦略、魚がどこにあるかというマーケティング戦略も大事。でもそれだけではダメで、現場の営業力も磨かないと勝てない。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」ではなく、「二兎を追うものしか、二兎は得られない」(言うは易しですが、敢えて言います。(笑))
──イソップ寓話と逆をやれ!
 
会計業界でも伝説的な経営者がいました。
 
その人は釣り好きで、どんな釣り方をしていたかと言いますと、魚群探知機を搭載した、クルーザーで、沖合に出て、大量に釣って、帰ってくる。
 
真偽の程はわかりませんが、こんな話を私の若い頃聞きまして、今でも印象に残っています。
経営と同じように釣りをやると感心したことがありました。
 
釣り好きは、そんなの釣りではないと怒るでしょうが、成果は一つ一つやるより、間違いなく高い。
 
もともと日本人は努力します、汗をかく習慣がありますから、私は、戦略、方向性を間違えなければ、まだまだ、日本企業は、グローバルにも頑張れると思うんですね。
「戦略を考えろと言われて、戦術が出てくる。これは、日本の製造業が抱えている問題の縮 図です。雑巾を絞るようにコストを切り詰め、品質を高めるために不断の努力を続ける。そんな絶えざる「カイゼン」によって競争力を維持してきました。戦略が不在でも、こうした戦術レベルの遂行能力の高さ―いわゆる「現場力」の高さ―で勝てて来た。逆に言えば、現場力があれば勝てるような「ルール」や「秩序」ある競争の中に多くの企業がいました。
 
しかし、経営環境における不確定要素、つまり「変数」が増え、単純には勝てなくなってきた。ヨットレースに例えるなら、こうした時代には、船員たちがどれだけ優秀で一致団結して汗を流して船をこぎ続けたとしても、ルールが変えられてしまえば、その船は負けてしまうんです。」(『経営学を「使える武器」にする』高山信彦著、新潮社)
──本社でも現場でも勝つ時代  言い換えますと、本社でも、現場でも勝たないと生き残れない時代が、深化してくるのかな?
 
社長力という言葉があるのかわかりませんが、社長力も社員力も両方大事。
 
すると、社長、トップは、「理論も実践も」できないと務まらない?
 
まもなくそんな時代が来るんでしょうね。
 
SkillもWillも、売上げも利益も、成長も安定も、規模も生産性も、もともと、経営は矛盾の止揚(アウフヘーベン)です。
  「マクロもミクロも」
  「森を見て、木を見て、枝を知れ!」
  「安かろう悪かろうから安かろう良かろうの時代へ」
  「個も組織も成長すること」
  「絶対、あきらめない→成功するまでやめないでも、経営は見切り千両」
  「社長力も社員力も」
 
きりがありません。(笑)
 
でも、社長は、あまり深刻にならず、明るく、楽しく経営する、これもコツです。
 
ゆめゆめ、ひきつった顔で、「生き生きとした組織」なんてスピーチしてはいけない。
 
よくあるんですよ。(笑)
 
徹底度六割、これでも入試はパスします。
──ORではなくAND
 
高校生の頃、安藤先生という英語の先生がおりました。
 
私が「あんど」の使い方を教えて?
 
と質問して、ものすごく怒られた記憶があります。
「あんど」が「あんどう」と聞こえたらしいんですね。どうでもいい話ですが。
 
ところで、現代のドラッカーと言われる、ジム・コリンズは自身の著書『ビジョナリー・カンパニー時代を超える生存の法則』(日経BP社)では、 ORではなくANDが、ビジョナリー・カンパニーには欠かせないと述べています。
 
神話十一
 
二つの相反することは、同時に獲得することはできない。
 
現実  ビジョナリー・カンパニーは「ORの抑圧」で自分の首をしめるようなことはしない。
「ORの抑圧」とは手に入れられるのはAかBのどちらかで、両方を手に入れることはできないという、いってみれば理性的な考え方である。しかし、ビジョナリー・カンパニーは、安定か前進か、集団としての文化か個人の自主性か、生え抜きの経営陣か根本的な変化か、保守的なやり方か社運を賭けた大胆な目標か、利益の追求か価値観と目的の尊重か、といった二者択一を拒否する。そして、「ANDの才能」を大切にする。これは逆説的な考え方、AとBの両方を同時に追求できるとする考え方である。(『ビジョナリー・カンパ
ニー』(ジェームズ・C・コリンズ著、日経BP社)
『ビジョナリー・カンパニー』の初版は一九九五年です。
 
やはり、コリンズは、現代のドラッカーです。
──君臨する企業はやっぱりアンド
 
マサチューセッツ工科大学の教授が三〇年余りに及び優良企業を研究した結果、企業が君臨し続けるために必要なことは「六つの法則」にまとめることができると言っています。
  
①製品だけでなく「プラットホーム」も重視する
  
②製品だけでなく「サービス」も重視する
  
③戦略だけでなく「ケイパビリティ」(組織能力)も重視する
  
④プッシュだけでなく「プル」も重視する
  
⑤規模だけでなく「範囲」も重視する
⑥効率性だけでなく「柔軟性」も重視する
(『君臨する企業の「六つの法則」』マイケル・A・クスマノ著、日本経済新聞出版社)
そして、実践で注意すること

──「小失敗」を見逃さない
 
よく、日本企業は、戦略ミスが多いが現場が頑張ると言います。
 
そうでしょうか?
 
私の小さな経験でも意外と戦術面、現場の失敗、怠慢も多いんですね。
 
ですから、トップは現場の把握も重要です。
 
もう五、六年前になりますが、南米のチリで、案内してもらった車が、韓国製でした。案内してくれた方は、もちろん日本人です。
 
私は当然日本車で案内してくれると思っていましたので、「何故、韓国車ですか?」と質問したことがありました。
「日本車も日本の電機メーカーもさっぱりここまで売りに来ない。熱心じゃないんだよね。」
 
こんなことで、大丈夫なのかな?と思ったことがありました。
 
六、七年前に、韓国に駐在して、韓国製の家電を買った人の話を聞いたことがあります。
購入してからまもなく、日本語でその家電製品の、良し悪しを聞いて来たといいます。
 
その方が言いますには、その時の韓国家電メーカーの対応の見事さに接し、「日本の家電は終わったな」と感じたといいます。
 
最近の成都での経験です。
 
中国の日系デパートの化粧品売り場で、日本を代表する化粧品が一番売れない、その理由は単純に「売り方が熱心ではない」だけだと言います。
 「その化粧品メーカーの中国の本部から、定期訪問する担当責任者に、フィードバックして もいっこうに対応しない」
 
こんな話をそのデパートの方から聞きました。
 
かつての太平洋戦争の敗戦は、一方的に「物量の違い」「戦略ミス」と言われていますが、一方、「小失敗」の連続でもありました。
「その小さな失敗の連続が敗戦にもつながった」とする説もあります。
「例えば、兵站の軽視、陸軍が潜水艦と航空母艦を作る愚、スロットルレバー(自動車のアクセル)が機材によって真逆、自動車の運転が出来ない日本兵、マニュアルが難解で初心者が理解できなかった、等々小失敗を連発していた。」(『日本軍の小失敗の研究』三野正洋著、WAC)
 
歴史は繰り返す、形を変えて?

スピードサービスの時代
──巧遅より拙速、スピードサービスが付加価値
 
はやさには 2 種類あると言われています。
「①実行の速さ、スピード   Speed 、
 ②変わり身の早さ   Agilityだ」(『経営の教科書―社長が押さえておくべき 30 の基礎科目』新将命著、ダイヤモンド社)
 
そして、人生はスピードによって決まる。
 
私は昔からよくいわれる『石橋を叩いて渡る』ということはやらない。
 
石橋だったら、叩かずに渡ってしまう。
 
大丈夫だと思ったら時間をかけない。
 
スピードを重んずる。
 
私は、スピードによって人生というものは決められていると信じている。
われわれには、神様から与えられた一定の人生しかない。
 
それゆえ、与えられ、限られた間に、自分の要求をどれだけ満たすか
 
ということが人生の最大目標であるから、
 
それにはスピードが絶対必要である。」
 
これは、私の過去の経営メモです。出典は忘れました。
 
別にこんなに急がなくてもいいのです。(笑)
 
でも、巧遅より拙速、これはキーワードです。
 
特に、サービス業は売るものの差別化で一番わかりやすいのが、「スピード」です。
──高速経営
 
ファストファッション最大手のザラの神髄は、「業界最速といわれるサプライチェーンだ。最短でわずか二週間、H & Mは、最短で約三週間、GAPは約六週間かかってしまう」(『日経ビジネス』、二〇一二年一一月五日号)
 
高速経営できる仕組みを作る、これもキモですね。
 
それには、科学とIT(道具)を駆使する。それと徹底した分業かな?
弊社は、まだ残念ながら、道半ばもできていませんが。

【POINT】
①戦略も戦術もどちらも重要であり、本社でも現場でも 勝たなければ生き残れない時代がきている。
②ビジョナリー・カンパニーは二兎を追っている
  →A OR BではなくA AND Bである。
③「小失敗」の連続が命取り
  →トップは現場の把握も重要。
④巧遅より拙速!  
  特にサービス業で、わかりやすい差別 化は「スピード」である。