本郷孔洋の経営ノート


5000社の経営者とつきあってきた筆者が、相矛盾する理想と現実を受け入れざるを得ないトップマネジメントの宿命に寄り添って記した随想的経営論

お買い求めはコチラから

惑う事なき経営哲学に貫かれ、
常に首尾一貫した行動規範に裏打ちされた経営者?
きっと世の中にはそういう神様のような経営者が実在するのでしょう。
神様のような経営者の揺るぎない経営哲学が綴られたビジネス本は、まるで勧善懲悪のヒーロー映画のように爽快な気分にさせてくれます。
しかし
本書はそういう経営本ではありません。
激しい経営環境の変化に迷い、溢れる情報に溺れそうになり、朝令暮改を自覚しながらも戦略変更を余儀なくされ、それでも経営という現実との闘いに日々邁進していらっしゃるリアルな経営者に寄り添って、5000社超の顧問先とのおつきあいから経営の“今”を書き留めた本郷先生の経営メモです。

本郷孔洋理事長 プロフィール

本郷 孔洋
ほんごうよしひろ
YOSHIHIRO HONGO
公認会計士・税理士

昭和20年 岩手県生まれ
昭和44年 3月 早稲田大学第1政経学部 卒業
昭和47年 3月 早稲田大学大学院商学研究科 修士課程修了
昭和47年 4月 昭和監査法人入所(現、新日本有限責任監査法人)
昭和50年 3月 公認会計士 登録
昭和52年 1月 本郷公認会計士事務所開設
昭和60年 4月 神奈川大学 講師
平成14年 4月 辻・本郷税理士法人 理事長就任
平成17年 4月 東京理科大学 専門職大学院 講師
平成20年 4月 東京大学 講師
平成21年10月 環境省 中央環境審議会専門委員

経営ノート 今年のポイント

経営ノート2012~会社とトップの戦略的跳び方~ より抜粋

トレンドを見誤り、戦略を間違えた企業は、たとえ大企業でも競争優位性を失ってしまう。3.11は歴史の大転換点の1つ、地域、エネルギー、ビジネスの枠組みが大きく変わる可能性がある。また、日本経済の先行きは極めて不透明だが、日本市場にはまだまだ成長の余地があることを肝に銘じて戦略を練る必要がある。

経営学は机上の空論ではなく、先人の知恵の結晶。経営を普遍的にとらえているので、自社の経営に置き換えて実行することができる。特にポーターの「競争の戦略」と「ランチェスター戦略」は、中小企業でも応用が利く優れた経営理論である。

経営の理論の中には、ある時代の風潮や出来事の中で流行した理論もある。また、一見経営理論とは関係がなさそうに見える思想の中にも、豊富なビジネス的価値が埋蔵されている考え方があることも見逃せない。

「戦略」とは、簡単に言うと目的、目標を定め、進むべき道を決めること。一方「戦術」とは、戦略を実現するための手段のことで、今までのやり方をベースに、オペレーションや進め方を改善すること。売上も利益も確保し、企業の安定も成長も求める時代には、戦略と戦術は重要な役割を果たす。ただし戦術のミスは取り返せるが戦略のミスは取り返すのに時間がかかることを肝に銘ずるべし。

戦略は実行しなければ絵に描いた餅。戦略を共有化し、自分の職域にあわせて何をすべきかを考え、実行し、不具合をフィードバックして新たな戦略を練り直していくことが戦略を機能させるポイントである。また、日本の現場の実行力はかなり高い。マクロで考え、ミクロで実行できるトップの力が加われば、日本企業にも勝機が見えてくる。

リーダーは、いつも有事と思い、準備すること。何が起きてもびっくりしない胆識が必要。タフであれ!また経済が下り局面を迎えた今の時代には、ブランディングなどによる差別化やM&Aを積極的に活用することは、大きな企業戦略となる。

経営者は10年で3度跳ばなければならない。企業は3年でモデルチェンジ、10年で大転換というダイナミズムで動いている。どんなによいビジネスモデルも、止まっていてはすぐにキャッチアップされるし、強み伝いの経営でも成長は望めない。これを打破するキーワードはビジネス・インサイト(経営者の閃き)。経営者が飛躍するために極めて重要な役割を果たしている。

ビジネスには節目の年というのがある。節目がどこかと考えるのもリーダーの役割である。私は、今年2012年が日本にとって激変の年、節目の年ではないかと考える。その波に乗れるかどうかで来年の展開が違うというつもりでビジネスをしたいものだ

最先端の業種でなくても成長できる企業の共通点は、サービスを産業化できた企業であること。日本は1970年代頃からサービス業への移行がはじまっているが、サービスの生産性や効率性をあげる戦略は、成長企業へのカギになるだろう。

ローコストオペレーション、システム化、分業化などをうまく利用してサービスの産業化を進めよ。ビジネスモデルを作るだけでなく、失敗しても仮説と検証を繰り返しながら執念を持って家族経営的な「3ちゃん経営」からいち早く脱却することもキーポイントである。

サービス産業化を実現するためのポイントはシステム化、徹底度はほどほどに、ニッパチ・サンナナの法則をうまく利用する、情報の共有化、ルール化。組織的に高いサービスを提供できるようなしくみづくりこそが、サービス産業化の中心的な課題である。

一生懸命働けば業績が伸びる時代は終わった。営業戦略(マーケティング戦略)と個々の営業がかみ合わないと業績は伸びない。さらに、営業戦略と商品が時代とマッチしていなければ、やはり成長することはできない。

たとえ大手企業でなくても市場で勝つヒントはランチェスター理論の中に隠れている。理論的には、営業員攻撃量の法則を応用し、営業員攻撃量を定量的に把握することや、地域戦略を徹底することで弱者でも勝ち抜くチャンスが芽生えてくる。

営業理論はわかりやすいものもあるが、実践するとなると話は別。実際に営業マンを大量動員するなど、ある種の力業も必要となる。また理論的に大事だと思っても、真の意味で納得(ハラオチ)するには時間がかかるものだ。

ビジネスの環境はおよそ10年ごとに変化する。成長を続けるには、次のトレンドをいち早く見抜くことが重要である。ただし、トレンドを見抜くだけでなく、実際の営業活動に結びつけることはさらに重要である。

経験だけに頼る営業から脱却せよ。そのためには、営業をもっと科学的にする必要がある。業務のフォーマット化、組織化を進め、営業活動を、時間をはじめとする数値で捉えてデータを分析することも有効であろう。最近はデータマイニングなどのデータ分析手法を活用する企業も増えている。

科学的な法則や分析は、営業マンの個々の行動に役立つことがたくさんある。また、繰り返しになるが、営業のフォーマット化は新人営業マンの即戦力化に大きな役割を果たすことになるだろう。ただし、科学やデータは大事だが、個々の粘りと執念という社員教育も同じく重要であることを肝に銘ずべし。

スーパー営業マンは生まれ持った「人たらし」の才能がある人で、誰でもなれるわけではない。組織として営業をサポートするしくみをつくり、成長する企業、組織をめざすことが求められるだろう。

機械が24時間働く工業化社会から人が主役のサービス化時代になった21世紀にあったワークスタイルとは何か。質の高いサービスを提供しつづけるために組織化は必須であり、デフレでも賃金を下げられないなど、経営の舵取りが難しい時代でもある。

サービス化社会では、労働生産性を上げることが営業利益を上げることに結びつく。日本の企業風土を考えると、インセンティブ制度による労働生産性の向上には限界が見られがちである。理想的には高能率、高賃金がサービス化した社会の特徴だが、人には能力差があることを認め、道具による能率化も100パーセントにこだわらないことが重要だ。

人材力を高めることはサービス化した社会で成長する企業の悲願であり、永遠の目標である。さまざまな事例にアンテナを張りながら、人材力強化の道を模索するほかないだろう。ただ、大変だけど実行し続けること、「あいさつと笑顔とありがとう」を徹底させることは、シンプルだが基本だと思う。

働き方について、ポイントは無理のある実施目標を立てないこと。徹底度はほどほどに、効率アップもちょっとだけ。しかしちょっとだけの目標のためのハードワーキングは求めることも時には必要である。ただし、現状で働き過ぎの経営者は意識的に頑張らないことも意識してみてはどうだろうか。

経営ノート 2011年のポイント

経営ノート2011~今を乗り切るヒント集~ より抜粋

景気は回復しないことを受け入れる。日本のGDPは現在の半分、1980年と同水準になる可能性もあるという危機感を持ちつつ、それでも持ちこたえる経営を考えることが重要。

経済が下り局面の現代では、ソコソコではジリ貧、現状維持では衰退の1途をたどることを、社員と経営者自身に常に語りかけることが重要。

日本の景気が下り坂とはいえ、沖縄国税局管内1つとっても先進国1国分のGDPがあり、1人当たりのGDPは中国の10倍を保っている。マスコミの悲観論に踊らされてはいけない。また、売れない原因はマクロ経済ではない。自社の内部に原因がないか、絶えずチェックすることと、事業は局地戦であることを肝に銘ずることが重要である。

工業社会だった20世紀は終わり、21世紀は知識社会に変貌する。生産手段の中心が人になる社会とは、人の能力によって生産性にばらつきが生まれる不平等な社会である。生産手段としての人は不平等であることを受け入れて経営する国々と競争するためには、この現実を受け入れなければいけない。

景気が悪くても、売上を伸ばし、成長しなければいけない。低成長時代で成長するためには、他人のシェアをいかにして自分のシェアとして奪い取るか、いかにしてシェアを高めるかを考えなくてはいけない。

ナンバーワンを目指し、大きなことを考えすぎて成長できない企業はたくさんある。現実的な第1歩として、その他大勢の「分母企業」から抜け出し、その領域で真剣に勝負できる「分子企業」を目指せ。達成可能性の高いことから着手し、確実に実現せよ。

利益を出すためには、大きなことを考えず手近なところからやってみる。費用の見直し(費用面)でも、間接的利益の確保(収益面)でも構わない。ただし、次の1手を打つ場合は営業利益が出るようになってから着手すべし。

「マーケティングで勝って営業で負ける」では売上増加につながらない。この時代だからこそ限られた営業力を効率的に使うことは極めて重要。いろいろなことが便利になった21世紀は、顧客に手間ひまをかける「御用聞き」タイプの経営が再注目される。手間ひまはカネになる。

市場規模が縮小傾向にある業界で成長するには、1歩先を行けばよい。業態を変換する、自社の定義を見直すなどの方法で、1歩先にいくことはできる。1歩を踏み出す決断力とやり抜く覚悟が問われる。

先行き不透明な時代は、ビジネスモデルに頼った経営は、はかない。社長の執念とタフさがなければ、修羅場を乗り切ることができない。

成長企業が持つ重要な力は「実行力」と「徹底力」である。考えても行動しなければ、考えていないも同じ。オペレーション(手法)を見直し、着実に実行(エグゼキューション)すれば、中小企業が大企業に勝つチャンスも生まれる。

経営は経営資源のすべてにおいて二兎を追わなければ生き残れない。一見、二律背反するような二兎を追うことでイノベーションが生まれる。

ローコストオペレーションを実現させるには、経営の枠組みの見直しに始まり、人、モノ、金、情報といった経営資源を最大限無駄なく使うことが求められる。